「精神科は楽?」看護歴15年ベテラン看護師が答える精神科のホント
精神科はとかく偏見やイメージが先行しがちな診療科目です。
ネットに溢れる様々な噂に惑わされてしまう新人看護師も多いでしょう。
「精神科は楽だ」という印象がありますが、果たして本当なのでしょうか。
ここでは精神科での看護歴15年の私が精神科の実態に触れながら、
『精神科は本当に楽なのか』
余すところなくぶっちゃけトークで紹介していきます!
「そもそも精神科って何をするの?」
何でもします!
……曖昧すぎますか?(笑)
精神科は患者さんの心の病気を治す科です。
精神病と一言で言っても、躁鬱病や認知症、アルコール依存、PTSDなど様々な病気があります。
生活が困難になった患者さんには入院という形で治療をします。
症状に応じて精神療法や薬物療法をしますし、
自力で生活ができない患者さんには入浴介助や髭剃り、トイレの介助などのセルフケアのお手伝いもします。
つまり、何でもします!(笑)
目に見えない心の病気を扱い、患者さんの心のケアをし、社会に復帰できるようサポートする。それが仕事です!
「一般科の仕事と違うの?」
全っ然違います!
精神科は一般科と違い目に見えない「心」を扱います。
患者さんの心の平穏を目指すことが目的で、精神療法や薬物療法に重きが置かれます。
なので患者さんとのコミュニケーションやカウンセリングなどに時間をかけることが多いですね。
はたから見ると仕事をサボってただ患者さんとだべってるだけに見えてしまうことも……(笑)
また一般科と比べると医療行為が極端に少なく、注射や採血などがメインです。簡単ですね。
その反面、薬に関しては詳しい知識が求められます。私も無茶苦茶勉強しました。
「ぶっちゃけ精神科って楽なの?」
楽です(笑)
というのも一般科と比べ、医療処置の機会が少ないですし、容態が急変した!ということもほとんどありません。
また、患者さんとじっくり向き合うことが求められるので、業務に追われることも少ないです。
なので基本的には楽と言えます。特に一般科から転職してきた看護師は驚く方が多いです(笑)
入院設備の無いクリニックでの勤務ですと更に負担は少なくなります。
また夜勤についても、実際することが無くて暇をつぶすのが辛いという意見もあるくらいです(笑)
ですがそれも病院によって事情が異なります。
例えば急性期病棟の場合は生命に直結する症状の患者さんもいますし、当然夜勤も急変が起こった場合は対応に追われます。
一般病棟と比べて夜勤の人数が少ないのでいざとなると大変です。
また、患者さんからの暴力や精神的なストレスなど、一般科では経験しない大変さがある世界です。
でもそれを踏まえても一般科のしんどさとは比べ物にならないくらい楽ですね(笑)
「一般科みたいにつらい残業は無いの?」
残業はほとんどありません!超ホワイト!
強く推せるメリットですね。プライベートな時間を大切にしたい人にもお勧めです。
「夜勤も楽?」
楽です!あまり楽だ楽だ言ってると怒られてしまいそうですが(笑)
一般科と比べて病状が急変したりすることも少ないので、いつも落ち着いていますね。
また当然ですが入院設備のないクリニックの場合は夜勤はありません。
「病棟とクリニックでは仕事内容は違うの?」
ちょっと違いますね。
クリニックは入院の設備が無い特性上、症状が浅い患者さんが多いです。
なので仕事の負担も比較的軽く問診や採血などが中心となります。
また夜勤の必要もなく、診療も夕方で終わるので残業も少ない!
診療が中心となるので、病棟と比べて一人の患者さんと過ごす時間は少なめです。
病棟では診療に入院患者さんに対しての看護が加わります。
病棟は症状によって「急性期病棟」「慢性期病棟」と分かれており、そこでも雰囲気は全く違います。
「急性期と慢性期でそんなに内容が違うの?」
超違います。選び間違えたら後悔しますよ(笑)
急性期病棟では短期間の入院の重篤な患者さんに対応する病棟です。
患者さんの入れ替わりも激しく、病状が急変することもあるので、仕事は忙しいです。
また救急機能のある病院ですとそこに急患が来ることもあり、医療処置の機会に接することも多くなります。
「医療処置の技術を学びたい」「スキルアップしたい」看護師にはお勧めです。
「じゃあ慢性期は?」
逆に慢性期病棟では長期間の入院患者さんが多いので、一人ひとりとじっくり付き合います。
急性期病棟と比べると症状が落ち着いているので、夜勤も急変に追われたりしません。
「カウンセリングをじっくり学びたい」「仕事に追われたくない」看護師は慢性期病棟がお勧めです!
「精神科の患者さんって何か怖いイメージあるんだけど……」
出た!よくある偏見第一位!
まぁ気持ちはわかりますけどね……。
精神的な疾患は病状や快復具合が客観的に見えづらいものです。
それと同様に患者さん自身もうまく自分の病状を伝えられない方がいらっしゃいます。
せん妄や被害妄想により上手くコミュニケーションがとれないこともあります。
精神状態が不安定なことで暴言や暴力に至る患者さんもいます。
これらは一般科の患者さんですとなかなか無い特徴ですので、戸惑う新人看護師も確かに多いです。
ですがこれは受け答えが上手くできない患者さんからの意思表示なんです。
誤解せず、患者さんの変化を見逃さずに冷静な対応をすることが大切です。
皆さんが思ってるほど怖がる必要はありません!
もちろん受け答えもはっきりしていて全く負担のかからない患者さんの方が圧倒的に多いですよ!
「暴力!?じゃあ毎日襲われたり怪我したりしますか?」
ないない!怯えすぎです!(笑)
確かに患者さんからの暴力や暴言を受けることはあります。
特に急性期にある場合、突然豹変し暴れることもあります。
でもそんなケースばかりではないし、第一そういう患者さんは隔離されたり、複数人で対応するなど対策が取られています。
なのである程度のリスクヘッジはされています。
じゃないと体がもたないですよ(笑)
「精神科で働くと看護師も精神病になるって本当?」
あー、確かにあります。そういう人、います。
精神疾患の治療は一人ひとりに寄り添ったものなので、こうすればよい、という特効薬があるものではないんです。
なので時には治療が上手くいかず無力感に苛まれたり、患者さんと衝突し恨まれたりします。
そんな苦しみに耐えきれずに自らも心を病んでしまう人は多いです。
心の病気で苦しんでいる患者さんを支えるには自分自身も強い心を持つことが必須です!
ただ、周りはそういった困難を乗り越えてきた先輩たちばかりです。
独りで抱え込まずに、気軽に相談してくださいね。
「職員の人間関係は良い?いじめとかある?」
めちゃ良いです!
一般科と比べて雰囲気が良く、職員同士も良好な関係が多いです。
優しく落ち着いた職員が多いのも特徴ですね。変わった人も多いですが(笑)
男性看護師が多いこともあり、一般科でよくある先輩女性看護師からの陰湿ないじめ……というのも少ないですね。
よく職員同士で飲みに行ったりすることもありますよ!
「精神科ならではのやりがいって何?」
精神科の看護師は他の科と比べると患者さんと接する機会が多く、その役割もとても重要なものです。
患者さんに向き合い、回復具合を喜び、一喜一憂しながら患者さんをサポートする充足感は他の科ではなかなか味わえないでしょう。
また、患者さんを通じて「自身が人間として成長できた」という感想を持つ看護師も少なくありません。
私は、精神科を選んで本当によかったと思っています!
「精神科のメリットって何?」
一番のメリットは負担が少ないこと!
複雑な医療行為が少なく、慢性期の病棟では患者さん一人ひとりにじっくり対応できるので、業務に追われることがありません。
また残業や夜勤が少なく、休みも取りやすいので仕事が大変で生活が無茶苦茶になるということもありません。
一般科の激務が辛くて辞めたい看護師にはお勧めです。
一般科に比べて年齢制限も緩いのもメリットですね。
還暦を過ぎても務めている看護師も多くいます。長期的に続けられる職業です。
「逆にデメリットは何?」
医療処置の少なさはデメリットにもなりえます。
新人の頃に看護師の基本技術を学べないまま看護歴が長くなり、知識も経験もないので転職が不安だという声も聞きます。
なので数年一般科で勉強をしてから精神科に転職してくるという人も多くいますね。
もちろん、そのまま精神科のプロフェッショナルとなるという道もありますし、
病棟によっては、一般科と同様に技術が求められ、その結果どこの科でもバリバリ活躍出来るレベルに成長した看護師もいます。
デメリットに関しては病院次第ですね。
精神科は専門的な科です。
学ぶこともたくさんありますが、逆に学ぶことが難しいことも多くあります。
「給料は高い?」
ぶっちゃけあまり変わらないです!(笑)
一般科と同じく「病院次第」という部分が大きく、正直どこもあまり大差はありません。
でも「残業が少ない」ので減った残業代の分だけ安く感じる人はいますね。(それってデメリットなのか?)
ただその場合も代わりに危険手当がつく病院が多いので、精神科だからって極端に給料が減ることはありません。
その中でも環境が過酷だったり通勤が不便だったりで、看護師の出入りが激しい病院はやはり好待遇ですね。
「危険手当って何?」
危険手当というのは危険が伴う処置を担当する場合に支給される手当のことです。
精神科以外にも放射線科などでも支給されますね。
精神科だと患者さんからの暴力などのリスクがあるので支給の対象とされます。
もちろん危険な目に遭わなくても毎月貰えます(笑)
支給額は病院によって様々ですが、平均すると1万円前後です。
「求人は多い?」
精神科の需要はどんどん増えています!
鬱病が社会問題になり広く認知されるにつれ、精神療法についての理解も広がってきました。
それに伴い、需要は高まるばかりです。
実際、需要の増加に伴い精神科の病院数も増えており、その増加率は他の診療科と比べても群を抜いています。
その反面、精神科は離職も多く慢性的に人手が足りない病院が多いので、需要はとても高いです。
「将来的に潰れたりしない?」
大丈夫です!
精神科で扱う病気は一日二日で治るものではありません。
中には10年20年とじっくり時間をかけて向き合っていかねばならない時もあります。
退院してもすぐに戻ってきてしまう患者さんも多くいます。
患者さんの生活に密着し、共に生きていく。一般科と比べても息の長い科です。
「興味はあるけど新卒で入職するのはやめとけって言われます」
よく言われるけど、気にしちゃダメです!
確かに精神科は特殊な環境です。
医療行為は少なく、それよりも傾聴やコミュニケーションの能力が問われます。
さらに患者さんは精神病の他に病気を併発していることがあり、病棟での急変時には幅広い知識と経験が求められます。
柔軟さが求められるので「新卒で何も分からず入るにはハードルが高い」というのが一般的な意見でしょう。
ですが、結局は自身のモチベーション次第です。
他の診療科でも手取り足取り学べる環境が整っていることは稀ですし、自学自習が求められます。
そこで向上心を持って取り組むことが出来るかどうかで看護師として活躍できるかか決まるんです。
それは精神科でも変わりません。やる気があり、努力を怠らなければ新卒でも全然問題ありません。
興味があるのに諦めちゃうのは勿体ないですよ!
「精神科で働くと転職に不利になるって聞いたんだけど……」
自分の努力次第です!
確かに医療行為が少ないという特性上、精神科で看護技術を維持することは大変です。
どんどんスキルアップしていく他の診療科の看護師と比べて、焦りや不安を感じる人もいるでしょう。
しかし、どこに居たって日々勉強。看護はこれさえ出来れば良いといったものではありません。
自身が足りない部分を見つめて吸収していく気概があれば転職先でも対応していけます!
精神科で学ぶコミュニケーションスキルは全ての看護の基本です。
精神科での経験を活かし転職先でも立派に活躍されている看護師はたくさんいますよ!
「資格を取ってキャリアアップすることは出来る?」
勉強熱心ですね!見習いたいです(笑)
日本精神科看護協会による精神科認定看護師という資格があります。日本看護協会の認定看護師資格ではありません。
また、それ以外にも日本精神科医学会が認定している認定看護師や、認知症ケア指導管理士、認知症ケア専門士などといった資格もあります。
資格を取得することはキャリアアップ以外にも自分の自信になりますね。そして自信は患者さんとの信頼関係にもつながります。
取得を目指して努力してみるのもいいでしょう。私はまだいいかな(笑)
「どういう人が向いてるの?」
特に向き不向きはありません。
最終的には続けられればそれが正解です。
あまり意識しすぎず、気にしすぎない人が向いてるかな。それじゃ答えになってないか(笑)
精神疾患は一日二日で治るものではありません。一進一退を繰り返し、何十年も苦しみ続けている患者さんもいます。
患者さんの中には被害妄想やせん妄に苦しんだり、自分の症状をうまく訴えられない人もいます。
長い期間を付き添い続ける粘り強さ、暴言や理不尽な行動に屈しない心の強さ、そして患者さんのふとした変化にも気づくことが出来る観察力が求められる世界です。
あとは職員、患者さんどちらも高齢な方が多いので、老人に話を合わせられると強いです(笑)
「男性の看護師が多いって本当?」
多いです!
実際一般科と比べて男性の比率はとても高く、男性や女社会が苦手な人にはお勧めです。
怖いですよね女社会……(笑)
患者さんの中にはパニックを起こし暴れる人もいます。
安全を確保するために拘束しなければいけないときもあります。
そういう時、男性の体格や腕力が必要です。
これは精神科の大きな特徴の一つです。
もちろん腕っぷしに自信のある女性もたくさん活躍していますよ(笑)
「患者を好きになったり、看護師と患者が恋愛関係になることはある?」
私はないです!(笑)
でも精神科は患者さんの心と深く付き合うので、正直、患者さんから好意を寄せられることは多いです。
これを陽性転移といいます。
実際にお付き合いをしている医師や看護師もいないとは言いませんが、基本的にはありえないと考えています。
度を越してストーカーになったり、逆恨みを買うことにもつながりますし、実際トラブルになったケースも少なくありません。
そういった危険を避けるために看護師にも規則があります。
百害あって一利なしと考えてますが、中にはその一利に溺れてしまう人もいるのかもしれませんね。
私は絶対嫌です(笑)
まとめ
いかがでしたか。
精神科はその性質上、どうしても偏見や誤解に惑わされてしまうことが多い職場です。
中にはゴシップ的な心無い記事もあります。
精神科を志す若者がショックを受けることもあるでしょう。
しかし実態は、とてもやりがいがある面白い世界です。
仕事自体はとても楽です!
でも楽だからというだけで入職すると、後悔する世界でもあります(笑)
大変で辛いこともありますが、それがやりがいや魅力でもあるのが精神科の特徴です。
逆に言えばやりがいを見出すことが出来ればこんなに素晴らしい職業はありません!
楽だし!(笑)
これを読んでいる皆さんも、誇張された情報ではなくきちんと情報収集をして、自分に合っているかを見定めてくださいね。
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